このコーナーではみなさんが知りたい身近な判例をご紹介します。

 トラブルに巻き込まれる前に このコーナーで知識を習得してください。

「ええっ!? そんなん知らん〜!」

             ・・・知らないでは済まされないのです!

《労働トラブル事例》


(問題) こんな理由で雇止め?  

・前任者が退職するため、6カ月の有期雇用契約(トライアル雇用)で採用された。
・雇用されて一週間目の朝、社長から
  「採用当初から欠勤が多い。このままあなたを雇用することはできないので、本日付で辞めてほしい。」 と言われた。
・理由を尋ねると
  「 トライアル雇用なのだから」と平然と言われた。
 ・一週間の間に風邪で数日欠勤したことは事実だが、トライアル雇用だからといって こんなに簡単に辞めさせることなんてできるの? 労働法違反ではないのだろうか?


ポイント⑴

労基法上の問題点はないか

  〜労働者を解雇する場合〜

労働基準法20条 解雇予告

労働者を解雇しようとする場合には、少なくとも30日以上前に予告するか、30日以上の平均賃金を支払わなければならない。



労働基準法21条 解雇予告除外

試みの試用期間中の者。



                

       では 今回の事例はどうなるのでしょうか?

 解雇予告が必要になるには・・


条件① 試みの試用期間の者


条件② 14日を超えて引き続き使用されるに至ったとき


条件①②の場合

雇用されて14日以内(一週間)であるため

     労基法21条が適用され「解雇予告」は必要ありません。


ポイント(2)

民事上の問題点はないか

労働契約法17条 契約期間途中の解雇

有期労働契約による場合は、使用者は、やむを得ない事由がなければ
契約期間が満了する前に労働者を解雇することができない。



民法623条 やむを得ない事由による契約の解除

当事者が雇用の期間を定めた場合であっても、やむを得ない事由があるとき
は、各当事者は、直ちに契約の解除をすることができる。この場合において、
の事由が当事者の一方の過失によって生じたものであるときは、相手方に対して
損害賠償の責任を負う。


    労働契約法17条

        [やむを得ない事由]とは?具体的にいうと?

 

過去の判例で解雇は無効とされたものをいくつかご紹介します。

判例⑴  安川電機八幡工場事件:平14.9.18 福岡高裁


パート社員を業績悪化を理由に中途解雇した


有期契約労働者の契約期間中の解雇について、事業の縮小その他やむを得ない事由が発生したときは契約期間中といえども解雇する旨定めた就業規則の解釈にあたっては、解雇が雇用期間の中途でなされなければならないほどのやむを得ない事由の発生が必要であるというべきとした。

判例(2)    モーブッサン・ジャパン事件:平15.4.28 東京地裁


30日前に書面で予告の上契約が終了できる旨記載した書面により
契約。業務上作成した資料に多数の記載ミスがあったことや通話料
金の一部を会社に不正請求していたことなどを理由として
                                中途解雇した


有期労働契約の契約期間中において、いつでも30日前の書面による予告の上、本件契約を終了することができる旨の記載をした労働契約書により契約を締結した者に対する契約期間中の解雇について、解雇の理由がやむを得ない事由(民法第628条)に当たるとは認められないため無効とした。


判例では、解雇の合理理性・社会的相当性の判断以上に厳格に判断されているようです。


(解決策) こんな理由で雇止め?  

この事例の問題点は、この2つ!

1 社長の「採用当初から欠勤が多い。このままあなた 雇用することはできないので、本日付で辞めてほしい」

 という発言が、採用して1週間という短期間で行われていること

2 「トライアル雇用なのだから」として期間雇用者を安易に解雇しようとしたこと


まずは 業務指導をしてみてはどうでしょう。

*採用して1週間という短期間である点も考慮すると、上司発言については解雇まで触れず、まずは労働者の欠勤の多さに対して注意・指導することで改善を促してはどうでしょうか。


解雇理由を検証してみると

*解雇理由が①欠勤が多いこと②トライアル雇用だから、という2つのポイントがあります。
*①は今後の状況次第ではわかりませんが、②は過去の判例の傾向からも厳しいと思われます。また、この言葉は労働者によっては新たなトラブルとなる可能性もあります。


いかがでしたか?

すぐに解雇!と感情的にならず 注意・指導という段階を踏んでいきましょう。改善を促す際には 記録を忘れずに!